Grand-ma's pouch ~GEORGE~

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数年前までカタログに載せていた商品、「Tobacco pouch」。以前購入頂いていたお客様から、また欲しいと言うリクエストがあって、制作した。
ただ過去と同じ様に作るのでは面白くないので、当時やりたくても材料が無くて出来なかったところや、気になっていた所を改良し、きっとお客様は気付かないだろうけど、実際は以前のものとは大違い・・・というものに進化させた。

故に非常に自信のある商品なのだが、腰に付ける様ではなく肩吊り用で、タバコがぴったり入る大きさという中途半端な商品なので、恐らく再販することは無いと思う。


ところで、このポーチを作っている際、アメリカ国旗がモチーフになっているので、以前にも、ここや工房雑記にも書いたが、「なんでインディアンが星条旗?」という空想の疑問に心の中で答えつつ制作していた。

簡単に言うと、「アメリカ社会でマイノリティーとして差別され続けている彼らが、自らの命と引き換えに、次の世代が堂々と生きて行ける様、国家に忠誠を誓い、戦争に自ら赴いて行った」象徴が合衆国国旗ということだ。
イラクに現在赴いている兵士達のうち、最下層の白人や黒人はメディアでも頻繁に取り上げられているが、インディアンの兵士達に関しては何故かあまり聞く事が無い。しかし、子供が「現在イラクに居る」というラコタの友人達は実際に多いのだ。


このポーチ、上で書いた様に中途半端な大きさだというのは以前カタログに載せていたときから、そう思っていた。何故それなのに作ったのかというと、実はこれにはモチーフになったポーチがあって、そのポーチはラコタの、詳しくは知らないんだけど高齢の女性が作ったもの。どうやらお孫さんに作ったものらしく、それが何故か今、僕の手元にある。もの自体は非常にチャチで適当で、ふちの部分に簡単に下手なビーズ細工が施されているだけなのだけど、「孫に作った」という説明通り、奇妙な力が籠っている。僕が常に自分に「技術ではなく、こういう想いの籠ったものを作れ」という戒めの為に、作業していて目につく所に下げている、宝物のポーチだ。


「星条旗」そして「孫の為に作ったポーチ」。
そんな二つの事情をぼんやりと考えながら作業していると、二つの事情が段々一つになっていって、自分の中で物語が出来上がっていった。

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 自分達の次の世代の為、彼は志願し、出征していった。

 彼は手の付けられないヤンチャだったが、小さい頃から祖母には心を開いていた(ラコタにはそういう子が多い)。祖母から、ラコタ族の昔のプライド等、昔話を聞いているうちに、彼は自然と彼ら自身の文化に目覚めていき、特にトラッドなダンスに才能を開花させ、近隣で知らない人の居ないパウワウの花形ダンサーに成長した。
 彼が踊り始めた頃、一家は貧しく、高価なコスチュームを購入するお金はおろか、材料を購入する資金も無かった。それが、彼を愛してやまなかったおばあちゃんが、自分の、そして今は亡き旦那さんが使っていた、そしてギブアウェイで得たビーズ細工品をほどいて、それを材料として孫の為に頭飾りを作ってやった。
 ハイスクールのパウワウとはいえ、豪華な衣装に身を包む子供達も多い。その中で、運動靴で踊るのはとても惨めなものだ。彼は「どうせならモカシンを作ってくれたら良かったのに」と正直なところ、祖母を恨んだ。でも不思議と酒浸りで働かない父を恨む気にはならなかった。
 運動靴で参加した彼だが、既に最初のグランドエントリーで、その非凡なダンスの才能は皆が認めるところとなった。そこで父兄会が衣装の提供を彼の家族に申し入れ、彼は立派な衣装を手に入れた。
 父は彼を車に乗せ、各地のインタートライブ・パウワウを転戦させた。そこで彼は次第に賞金を得、家計を助ける事が出来る様になっていった。
 そういった若者にありがちなのは、慢心だ。きっと彼にもそれはあったのだろう。しかし、恐らくどこかで転機があったのだ。というのも、彼の衣装の中に、あの祖母の作った頭飾りが常に輝く様になったから。
 以来、彼の踊りには魂が宿る様になった。そして彼の得た賞金で、弟や妹達は皆、学校をドロップアウトすることもなく、兄を誇りに思い、各々が伝統保持の活動に身を捧げる様になっていった。
 そんな彼が出征することになったとき、おばあちゃんはタバコ入れのポーチを彼に作った。ふちどりには星条旗、真ん中には、誇らしく星条旗をかざし、踊る孫の姿。タバコを吸わない彼に何故祖母はタバコのポーチを作ったのだろう。
 それは、大地を清める為に使うタバコ用だった。
 祖母は彼の出征の何日か前、ポーチを渡しながら、例え敵地であろうと、それは敵にとって神聖な土地であり、各々の精霊が守る地であり、敬意を表しないといけないこと、そして、すべてのものが皆、繋がって生きている事、分け隔ての無い心を持つ事、戦士の慈悲の心について語って聞かせた。それは彼が昔から何度となく祖母から聞かされていた事ではあったが、その時はまるで、準備が出来ていたかの様に、心に刻まれてゆくのを彼自身感じ、黙って聞いていた。
 そして彼は出征していった。笑顔を残して。家族は家の外までは送らなかった。それが習わしだ。黙って、各々の部屋の中で、彼らのたったひとりしかいない自慢の家族が、出来れば無事に帰ってくる事を、各々が祈っていた。

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作りながら、そんなストーリーが自然に湧き上がってきて、まるで僕がおばあちゃんにこのポーチの制作を頼まれて作っているかの様な、真摯な気持ちになっていった。背景を知っているから、真剣だった。何かに取り憑かれた様にして制作した。そして制作が終わったとき、自分がこのポーチに"GEORGE"(ジョージ)という名前を刻んでいる事に気がついた。
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GEORGEって誰だろう?何故ジョージなのだろう?ブッシュへの皮肉とも考えられるか?理由はまったく分からない。もしかしたら、ラコタの誰かと、心がリンクしてしまったのだろうか。強い想いを発していた誰かと。

もちろん、このポーチはオーダーをくれたお客さんに出す訳にはいかない。こもっている想いが大き過ぎて、持て余してしまうだろうから。ジョージなんて字も要らないだろうし。
そこでもう一つ、同じものを作った。もちろんジョージの字と共に、こういった重みも抜いて。
そしてこのポーチを、Grand-ma's pouchと名付けた。
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by oglala | 2008-05-29 18:29
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