カテゴリ:修理情報( 2 )

修理情報

弊社は、当初修理に関してはすべて無料でした。しかし、それでは経年変化や、明らかにお客様に落ち度があった際の対応に困ってすぐに行き詰まってしまいました。

例えば、常に着けていたいからといって、風呂にまで一緒に入っている、ということで土台の革がボロボロになり、それを修理するには最初から新しいものを作らなければならなかったとか。

酔って、仲間同士でチェインで綱引きをしてちぎってしまったりだとか。

「ビーズはコワレモノです。それを壊さずに着けこなす事が、ビーズ細工を持つ、という文化であり、その人にとってはステイタスなのです」と、口をすっぱくして言っているお陰で、最近は修理が激減しました。

現在の弊社の修理体勢は、ご購入後一年以内の「製造上の問題に起因する」壊れのみ無償修理、それ以外は有償での修理、ということになっております。有償にはなりますが、何十年経ったものでも、いや、年月を重ねたものだからこそ、込めて頂いた愛情を損ねることなく修理を引き受けさせて頂きます。

とはいうものの、自分の場合、どれぐらいかかるものなんだろう?また、自分では大切に扱っていたつもりなのに製造上の問題にならないのだろうか?等、色々と不安に思われたり疑問に思われる事もあるかと思います。

率直に申しまして、現在のところ、製造上の理由による修理は、ほぼありません。一年に一度あるか無いか、といったところでしょう。

上の様な疑問に答えるため、そしてそれが自ずと、ビーズ細工の持ち方、扱い方、という文化を日本でも確立してゆくため、修理の情報を公開してゆくことにしました。

何が、どうやって壊れたのか、というメカニズムを解明してゆきます。
「インディアン・ビーズ細工を使いこなす事が出来る」、というステイタスを、あなたが確立するお手伝いが出来ましたら幸いです。




さて、では始めましょう。
第一回はpeyote bangle Mです。


基本的にペヨーテ・ステッチというのは、三つの原則さえ守って制作すれば壊れ様が無い技法です。

第一:芯になっている材料を曲げたりしてビーズの中を通っている糸を動かさない。
第二:ビーズにクラック(ヒビ)を入れない。
第三:出来るだけ芯材に硬い素材を使わない。

第一の原則は、特に13号カットビーズを使用している際には非常に重要な要素です。というのも製造上の特徴から(これは欠点でも問題でも無く、あくまでカット・グラスの”特徴”です)、糸を通す穴の周辺にカットがある事があり、そこを糸が強く擦れることで糸が切れてしまうのです。
ペヨーテ技法は基本的には糸が穴から45度の角度で下横のビーズに向かうので、中の糸が動くとナイフのエッジで擦るのと同じことになります。
土台を曲げたりすることで糸は自ずと曲げの外周に向かって逃げますから、その際に切れてしまいます。
ワックスを塗れば良いでは無いか、と少しビーズを知っている方からは言われるかもしれませんが、13カットのエッジによる切れというのはそんな甘いものではありません。確かにワックスの会社はエッジによる切れの予防を効果に唄っていますが、それはワックスが糸を保護するというものではありません。それはワックスによる抵抗で糸が動きにくくなるからですが、芯材を曲げた時に糸にかかる力はワックスによる抵抗よりも大きいです。むしろワックスを塗りすぎると、ペヨーテの第二原則の部分でマイナスになることがあります。なので、インディアン・ビーズのhow toなどを見ているとペヨーテ技法にはワックスを忘れない様にと言われていますが、あれは糸にテンションをかけ続ける事が出来ない初心者用のアドバイスであることを忘れてはいけません。
第一原則に抵触する症状が起こった時の壊れ方の特徴は、バングルの場合、最もカーブがキツイ場所の、バングルの内面も外面も均一に糸切れが起こっている事です。

第二原則は、「当たり前じゃないか」と思われるかもしれませんが、ビーズを一度割ってみると分かりますが、卵やトンネルが外からの力に比べて中からの力に弱いのと同様、外側から力をかけて割るのは難しいですが、中側からの力には案外アッサリと割れます。
ペヨーテという技法は一つのビーズの穴の中に、最低2回、多い時だと4回糸が通るので、その圧力でビーズが割れてしまいます。
そこで弊社の場合、ペヨーテ技法では使用出来ない色のビーズ、というものが出て来ます。どうしても、というリクエストがあった場合は、糸の細さを一段細いものにしたりしますが、取り扱いが難しくなる事があるので余程丁寧に扱える方用です。
この原則に抵触する症状が起こった時の壊れ方の特徴は、同じ色のビーズに症状が起きたり、糸が3回通る、「繰り上がり」と僕の呼んでいる箇所で多く壊れが見られることです。これもバングルの場合、内側外側を問わず起こります。

第三原則は、ビーズの他の技法にも同様の事が言えますが、ビーズ自体ガラスで出来ているコワレモノなので、硬いものとぶつけ合う事で、どうしてもビーズは割れてしまいます。それを避けるため、本来は革等、クッションを下に敷く必要があります。
しかしながら、これはあくまで理想論であり、カットグラスが穴周辺のカットの断面を避ける事が出来ない事が”特徴”である、と申したのと同様、制作するもの、または技法によって、どうしても硬いものをベースにする必要があるのです。
特にペヨーテの場合、バングルは芯材にブラスを使っておりますが、その上に革を巻く事は技術的にも、第一原則、第二原則と照らしても、不可能に極めて近いのです。
実際、やってやれないことはありません。しかしクッションとして充分な革を巻き、その上にペヨーテ技法を施すためには、最初からバングルを完成形の姿に曲げている必要があります。その様に制作しようとすると、一本のバングルの制作にかかる所要時間が10倍以上になります。自ずと価格もその通りになってしまいます。peyote bangle Mは20万円近い存在になってしまいます。
そこで弊社のとれる方針としては、以下の二つかと思われます。

一つ目に、こわれる可能性のあるものは、商品としてラインナップしない。
二つ目の選択肢として、壊れやすい、ということをお客さんに理解して頂いた上で持って頂く。

ペヨーテ技法のもの以外でも、一つ目の選択肢によって、やりたいけどラインナップに加えていない、という商品は数多くあります。ただ、これは思うに、誰に、またはどんな使い方をする人に合わせた商品を制作するか、という基準の問題であるかと思います。
例えば、破れやすい薄衣の服でハードな林業の様なハードな作業をされる方も居ないでしょう。
絶対に壊れないもの、と思われているなら、元からガラスで出来たビーズというのは不適格な存在です。
昔、チェインのフックを金属や革から角に変えた際、「折れそうで怖いから」と取扱店からも元のに出来ないか、という相談を受けました。ところが、僕が考えたのは、この角フックというのは言わば安全装置なのです。ここが金属だと、自然に「丈夫」という意識で扱われますが、華奢な、角で出来たフックだと自然に扱いが丁寧になります。
この、チェインというのはどうしても扱いが荒くなる場所に着けられるアクセサリーですので、上の三つの原則とは遠い、取り扱い上の問題で、非常に破損の多い商品であり、特にビーズを着ける文化が低い日本では最難度のアクセサリーでした。
そこでも、どうしても廃版にしたくなかったので、考えに考えて出した結論が角フックだったのです。以来、修理が格段に減りました。
以前、格段に強い鹿の角が手に入り、それでフックを制作した際に工房雑記で「このフックを割る人がいたら、その人はビーズ細工が向いていない」と書いた折、「客に出すものに壊れるものを出すな」と書き込みを頂いた事があります。僕は上記を全て熟知した上で書いておりましたので、他の人はどう思うかな?とそのコメントを消さずにしばらく楽しんでいました。僕の口が足りなかった、というか僕の性格的に、文章が挑発的だったのだろう、とは思いますが、それ以上に、ビーズはコワレモノであり、強度を誇るものでは無いので、可能な限りの制作上の強度は必要なものの、そのビーズ自体の強度に合わせた各パーツの強度のバランスというものは結果的に永く愛用して頂くためには必要なものです。
もし、すべてに強度を優先して、弱いものはラインナップから外すとしたら、商品構成はとてもつまらないものになります。というよりも弊社には商品が無くなります。結果的に、お客さんに、ビーズ細工を壊さない様に持つ、という文化を体得して頂く、というのが弊社の選択となりました。もちろん、誰が持っても壊すもの、であれば商品としてラインナップは出来ません。ただ、ビーズ細工を壊さない様に持つ文化以前の、ものの扱いが普通な方、というラインを基準にして現在は強度の設定をしております。今後、日本でもアメリカと同様な、ビーズ細工を壊さない様に持つ文化、というものが一般的になれば、もっと色々な魅力的な作品を弊社は皆様にお目にかける事が出来る様になるでしょう。



ながくなりましたが、以上のことを念頭に置いて、今回の修理品をみてゆきましょう。
基本的に針が当たっている所の、すぐ上下左右が壊れ箇所です。
e0114851_2343093.jpg

e0114851_2344529.jpg

e0114851_23508.jpg

e0114851_2352388.jpg

e0114851_2354284.jpg

e0114851_2355563.jpg

e0114851_2361536.jpg

e0114851_2363095.jpg

e0114851_2364364.jpg

e0114851_2365916.jpg

e0114851_2371457.jpg

写真では11枚ですが、実際には一カ所のビーズが割れているだけに見えても、数個のビーズにクラックが認められました。実際のところ、100カ所以上の欠損が見つかりました。
この壊れ方で特徴的なのは、バングルの内側に欠損が全く無かった事です。横面の欠損にも内側の方には欠損がありません。これはつまり、肌で守られているところには欠損が無かったということです。これは、何かに常時ぶつかることによって出来た欠損です。よほど乱暴であったか、時計や他のアクセサリー等、金属を同じ腕に着けていても起こることがあります(丁寧に扱えば起こりません)。
一カ所、一周回った欠損がありますが、これは一般的にはバングルのカーブ(寸法)を変えようと、急激な力をかけた際によく起こるトラブルです。正しいサイズのバングルであれば、最初は痛くとも、身に着け続ける事で、硬いブーツの様に、バングルは徐々に当人に合ったカーブになってゆきます。無理な力を急激にかけることは危険です。
ただ、この場合はちょっと違う様に思われます。同じ周の左右が、徐々に割れて糸が切れる事で起こった症状の様に思われます。それは糸の切れ方、砕けたビーズのカケラ(ルーペで探す)等で分かります。
いずれにせよ、製造上の欠陥とは言いがたいです。

実は、このバングルの修理には、丸々2日間を要しました。しかしながら、お客様に請求させて頂いた金額は、およそ2〜3時間分の時給でした。おそらく実際にお客様に請求される額(修理の掛け率は、店舗によってまちまち)は6千円といったところではないでしょうか。
[PR]
by oglala | 2012-01-08 23:35 | 修理情報

修理情報の公開

前々から考えていたのですが、修理の情報を、その都度公開することにしました。

公開するのは、商品名、修理箇所、何が原因で壊れたのか、その事に対する今後の対処、等です。

「そういったことを公開出来る程、修理が少ない事に自信があるのか」と思われるでしょうが、正直言いまして、逆です。「こんなに修理が多いのか!」と驚かれる方も多いかと思います。恐らくこれを公開することは、商売としてはマイナスかと思います。

数で言うと、一ヶ月に一つペースで修理は入って来ます。それは、革と糸とガラスで出来た贅沢品、ビーズ細工の商品の宿命だと思います。
しかしながら、持ち方、使い方によっては、一生どころか、数百年も使い続けることが出来ます。ラコタ等、ビーズ細工が生活の中に当たり前にある人達は、そういった扱いを熟知していますが、日本ではその知識は全く無いに近い状態です。
そこで、修理情報を公開することで、ビーズ細工品のうまい持ち方、どこが弱いのか、何に注意して持てばよいのかの情報提供、ヒントにもなってほしいと考えています。

また、僕はラコタの伝統的な作り方をベースにモノ作りをしていますが、「ラコタでは壊れないし、この強度で充分なのだけども、日本ではこれでは壊れる」といったモノも多くありました。こういった、予見することが難しいトラブル。また、根本的に考えが足りずに起こるトラブル。そして設計不良によるトラブルもあります。
そういった製作上の欠陥は、お客様、各取扱店様の協力のもと、常に改良され続けています。そういった改良の過程を見て頂く事、そしてマイナーチェンジのお知らせ情報にもなればと考えております。


さて、では第一回として、三ヶ月間ためていた修理品の情報を公開いたします。

1、 Round Key Holder
e0114851_19481949.jpg

症状 : かがりビーズほつれ。
原因 : 旧バージョンは土台とビーズ土台とで金具取り付け革をサンドイッチにして縫い付けていたが、それにより両土台が常に動いている事になり、結果的に急激な力がかかった時等に本体を壊す結果になっていた。今回の症状もそれが原因。
対処 : 新バージョンで解決済み。具体的には、金具取付部を、両土台に影響がまったく出ない、内部芯に直接取り付けることでトラブルを解消した。また、ビーズ土台がフェルトだということで不安視する声(僕自身の)もあるが、亀キーホルダーと違い、フェルトを接着剤で固形化するので問題は無いと思う。
 
e0114851_19572783.jpg

修理費用 : 無償

2、 Loom Keyholder
e0114851_19591142.jpg

症状 : ビーズ土台の脱落
原因 : 不明
対処 : このキーホルダーの特性上、取り付けにこれ以上の強度を持たせる事は不可能。以前にかがりの先端のビーズがほどけるトラブルは頻発したが、それは対処済み。今回のものはそれとはまったく違う症状だが、正直な話、これは使い方による部分が大きいと思う。
しかしながら、キーホルダーというモノの特徴を考えれば、踏まれることもあると思うし、今後の対策の必要性も感じるものである。現状を見せて頂けた事に感謝する。
なお、この商品は理想的な革が入手出来ないため、現在生産中止中。
修理費用 : 有償

3、 Chain
e0114851_207065.jpg

症状 : 取付部破損、ユニットずれ。
原因および対処 : チェインの特性上、何かあった時にここが切れて力を逃がす様、一部を弱く(革を梳いて細くして)作っていた。その部分が過剰に弱かったため。
対処 : 「安全装置」を過剰に考えていたが、想定外の力がかかった場合、どれだけ頑強に作っていても、編んでいない限り芯の革ひも自体が切れる。そこで現在のものは革ひも本来の強さを出すため、革ひもに穴等をあけずに結ぶ様にしている(見た目は前のモデルの方が良いが)。また、現在のモデルは、この革ひもよりも1ミリ厚いものを使って、より頑強さを増した(現モデルへのアップグレードは有償)。
ユニットずれは座った際に踏んでねじることによって起こる。ユニット内破裂を起こさないために、ビーズを土台に固定する箇所を減らしてフレキシブルにしていたのだが、その安全装置が過剰に働いて起こったトラブル。フレキシブルさを失わず、固定する方法を開発したので、今からのモデルには起こらないと思われる。ビーズチェインは、一カ所を強化すると他に歪みがくるので、非常に難しい商品だが、次第に完璧になりつつある。
e0114851_20125922.jpg

修理費用 : 無償

4、 Turtle mini porch
e0114851_20144543.jpg

症状 : シッポ部分の緩み。
原因 : 革の伸縮についていけず、時間経過で糸が余ってしまった。
対処 : どこも切れていないので、対処が難しかった。一旦しっぽの糸を切って、焼いて固定したが、焼き尻が残ってしまい、どうにも不格好になってしまう。
e0114851_2018615.jpg

そこで焼き尻を飛ばし、次に繋がる箇所を補強する事で、伸縮にも耐えられる様、スタビライザーにした。
e0114851_20502220.jpg

次回からの対処として、手足しっぽと連続して行かずに、毎回甲羅に戻る必要を感じた。その分時間がかかってしまうので、少々の値上がりがあるかもしれない。
なお、現在この商品は革をブレインタンに変えて販売中。白革版は理想的な革が入手できないので廃版中。
[PR]
by oglala | 2007-03-22 20:49 | 修理情報